フラワーリング
よくやくその場を離れようとした時、

「やっぱり迷子になってたんですね!」

明るく、優しい声がチャペルに響いた。

振り返ると、ひかりさんが少し息を切らせながらこちらへ歩いてくる。

「すみません」

彼は申し訳なさそうに笑った。

「謝るの、何回目ですか?」

「今日はまだ一回目です」

「そういう問題じゃありません」

呆れたように言いながらも、ひかりさんはどこか楽しそうだ。

どうやら本当に迷子だったらしい。

「紬ちゃん、見つけてくださったんですね」

「たまたまです」

「助かりました。ありがとうございます」

そう言って彼は軽く頭を下げる。

「改めまして」

ひかりさんが私たちの間に立つ。

「こちらが今日から装花をお願いしているフラワーデザイナーの――」

「橘です」

彼は穏やかな声でそう名乗った。

「よろしくお願いします」

「久遠です。よろしくお願いします」

私も頭を下げる。

それなのに、視線はまた彼の手元へ向いてしまった。

本当に失礼だ。

そんなことを思いながらも、目を逸らせない。

昔からの癖は、そう簡単には直らないものだ。
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