煉瓦坂の少し奇妙なX'mas

クリスマス? 歳末感謝祭? 何を言ってるのさ。by智樹

「歳末感謝祭……?」
 環の背中を見送って、ツリーを眺めて思わずそう呟く。
「環さん、相変わらず尖ってますね」
「まぁ、ええと。ん-」
 吾郷君の言葉になんて答えるべきなのかはよくわからなかったけれど、環とは長い付き合いだから、何をやったのかはなんとなく、わかった。俺がやりたかったクリスマスは、この店の店員と慰労も兼ねて小さなプレゼント交換をすることだった。クリスマスっぽいことをしたい。
 でもお客さんとかケータリングとか、いろいろなものがくっついていくのを一体どうしていいかわからないまま膨らんで、よくわからないものにしてしまったんだ。
 それを俺のやりたいクリスマスパーティとそれ以外を、このバックヤードを仕切る扉で全部わけたってこと。すっきりした。

 だから昼過ぎにお客の流れがと切れた時、お店のみんなにお客さんが入れたものはお客さんに返すことを明言する。それについてはまぁ、みんなの同意が得られた。多かれ少なかれお客さんにストーキングされたことがあるから。
 吾郷君が手を上げる。
「公理さん、ケータリングも客用ですか?」
「え?」
「元々は内々のパーティ用でしたけど、公理さんが客用に追加した分はともかく」
 えっと……?
「ちょっと考えとく。でもお客さんと一緒に食べるのは推奨しない。その、誰だったか前にドリンクに眠り薬かなんか盛られた人、いたよね」
 二人ほどが顔をしかめた。やっぱこの業界はちょっと不健全。
「だからお客さんと飲食するのはやめよう。完全に分けてウェルカムドリンクをお客さんに配るくらいにして、僕らのは最初から取り分けて置こう」
 あれ……分ければいいんだよな? なんだかよくわからなくなった。
 とりあえずそれで解散にして、今日の分用プレゼントに買ってきたグリューワインを袋の中にいれると聞こえた小さなざわめきにビクッとあたりを見回す。環が区切ったから、この中には変なものはいないはず。
 ……讃美歌? 気のせい、気のせい。環は聞こえるって言ったけれどきっと気のせいだ。
 それで店に戻ってクリスマスツリーに飾り付けをする。だいたい大詰めで、この赤いリボンをつければあとは大物がいくつか残っているくらい。それでツリーの飾りセットに同梱されていたオーナメントの説明書に『クリスマスのリボンは互いの愛情が永遠に結ばれるため』とあるのが目に入り、背筋が凍り付く。この店で愛情とか、誰も求めてないから。
 なんだか少しだけ嫌な気分になって、恐る恐るリボンをつまんでツリーに取り付ければ、吾郷君が写真を撮った。
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