煉瓦坂の少し奇妙なX'mas
「お前らはクリスマスパーティとやらをやりたいんだろ?」
「う、うん。そうだね」
「バックヤードで小さくやれ」
 ぽかんと口を開ける智樹に、説明するのが酷く億劫になった。どう考えてもこれから俺が話すことは拗れきって聞こえることは目に見えている。
「目的は、25日に宴会をする際に、何の問題もなく終わること」
 智樹の瞳が若干泳ぎだす。
「うん、まあそれはそう。あと、讃美歌」
「問題を切り分けるんだ。バックヤードと店で世界を分ける」
「え、そんな大事? あ、ごめん」
 軽く睨めばますます目は泳ぐ。
「中途半端な区分けをするから、扉は用をなさなくなる。心当たりがあるだろう。俺も何度も呼び出されたくはないんでね」
「う」
 誰でも入れられる態様で有象無象を集め、人を限定せず宴会を開く。誰なら入れて、誰なら入れない。結界にはその厳密性が必要だ。脇の甘い智樹が定めれば、穴の開いたザルも変わらない。

 バックヤードへ至る扉は一つ。その入口にいくつか呪まじない石を置き、印をつけ、小さなものの住処を奥に限定し、それ以外の思念を店側に追い払う。それを確認して、システムを編む。
「智樹が認識するクリスマスパーティが終了するまで、智樹及びこの店の人間……ではなく従業員以外のこの扉の出入りを禁ず」
「おうぼうだー」
「あそびたいー」
 とたんに扉の奥でざわめきが膨れ上がる。
「うるせぇ。年賀に何か持って来るから」
「あの、環?」
「クリスマスパーティはここでやる。従業員とお前の持ち込んだプレゼント以外は配らない。いいな」
「う、うん、わかった」
 そうして魑魅魍魎が跋扈しているように見える店側を眺める。
「で、こっちでやるのは歳末感謝祭だ」
「歳末……?」
「そう。クリスマスでもなんでもなく、バックヤードでやるパーティとは完全に無関係の、店の祭事だ」
「クリスマスではなく……?」
 智樹の視線がツリーに及ぶ。どうみてもクリスマス、だな。
「植物はいつもリースしてるだろ」
「まぁ」
「今月はモミで、歳末だからただ飾り付けをしているだけだ。あのベルは年末年始の鳴り物」
 吾郷が俺を見る残念そうな視線に居たたまれなくなってきた。
「とにかく店内のものは決して受け取るな。余ったら全てゴミ袋にいれて処分するんだ。お前らが裏でパーティやる前に。そうすれば2つの祭事は、時的場的意味的に、全て無関係になる。店でやるのは歳末感謝祭だ。いいな」
 智樹は神妙に頷き、吾郷は目をそらした。
「バックヤードで讃美歌は聞こえるだろうが、クリスマスなんだから気にするな」
「え?」
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