傲慢すぎる警視に守られて愛される
橋の下を電車が通過していく。

朝の通勤電車の中は、ぎゅうぎゅうとまでは行かないまでも多少の混雑具合だ。
山下愛(やましたあい)は鋭い目線を乗客たちに向ける。

(いる)

ドアの1番近くに女子高生が立っていた。耳にはワイヤレスイヤフォン。スマホを見ている。
愛は彼女のスカートが見える位置に移動した。

確認すると女子高生の周りに視線を移す。
ある男の前で視線が止まった。
愛の目は自然と細くなる。
その男は明らかに女子高生をじろじろと見ている。

愛はゆっくりと動き出す。
同時に男も女子高生に向かって歩みを進めた。
女子高生は全く気付く様子もない。
電車が大きく揺れた。
女子高生は身体を反転させて、男側に背を向けてしまう。
愛の眉間に皺が寄る。

(あれでは、あの男の思うツボになってしまう)

愛は乗客の間をすり抜けて女子高生に向かっていく。
男の方が若干はやい。
その時、次の駅へもうすぐ着くことを知らせるアナウンスが聞こえてきた。

(なるほど、すぐに逃げられるように今まで動かなかったのか)

男はスマホをポケットから出した。

(盗撮か……)

愛の位置からは、まだ画面は見えない。

(焦るな、焦ると気付かれる)

愛は自分にそう言い聞かせながら、男の背後を取ろうとする。
男が振り返りそうになったので、そのまま歩みを進める。
男が女子高生の背後を取った。
まるで次の駅で降りるのを急いでいる人かのように自然なかたちだ。
愛は再びゆっくりと男の背後を取り、スマホを覗き込む。
画面は撮影モードになっている。

(やっぱり……)

体中から怒りがせりあがってくる。
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