傲慢すぎる警視に衛られて愛される
(また始まった)


愛は困った顔で笑う。


「またその話? もう、それは充分、話し合ったでしょ」

『そうだけど、もっと普通の職業じゃダメなの?』

「お母さんの普通は安全な職業って意味?」

『警察じゃなければ、まあ』

「じゃあ、自衛隊に入ろうかな」

『愛!』


佳代子は叫んだ。


愛は思わず耳からスマホを離す。


「冗談だよ。警察がいいの。私は」


佳代子はテレビを消してため息をついた。


『お母さん、お姉ちゃん……元気?』


佳代子は廊下の方に目をやる。


「今、お風呂に入っちゃってるのよ。あとで電話させようか」

『いや、いい、いい。てか、こんな時間に?』

「お姉ちゃん、仕事、始めたの。帰ってきたらすぐにお風呂に入るのよ」


愛は動揺した。


「お姉ちゃん、外に出てるの?」

『うん』

「大丈夫なの?」

『大丈夫よ』


佳代子は優しい声で言った。

愛は膝をぎゅっと抱えた。


『愛、お姉ちゃんのことは大丈夫よ』

「う、うん……」

『あれは、あなたのせいじゃないからね』



お風呂場では美憂がシャワーを浴びていた。

濃いメイクを落としていく。


愛は写真立てを見つめた。

そこでは制服姿の中学生の愛と高校生の美憂が笑顔で写っている。


『愛?』

佳代子の声でハッとした。


「あ、ごめん。じゃあ、切るね。安心して。私はニュースでやってる事件とは関係ないから」


佳代子はホッとしたように微笑んだ。


「わかったわ。じゃあ、また」


佳代子は電話を切って立ち上がった。

そのまま廊下を歩く。

お風呂場の前で立ち止まり、洗面所のドアを見つめた。

ドアが閉まっていて、シャワーの音だけが聞こえる。


お風呂場では美憂がシャワーで顔についた泡を流してた。

鏡に美憂の顔が映る。

泡がすべて流れ、美憂が目を開ける。

美憂の顔の傷が露になる。

右目の下から唇の下まで斜めに大きく入った傷跡。

美憂は鏡の中の自分を黙って見つめていた。
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