傲慢すぎる警視に衛られて愛される
古い5階建てのビルは、夕暮れのオレンジの光でくすんだ外壁をさらしていた。

2階のレンタルスペースは必要最低限の家具だけが置かれた、飾り気のない部屋だった。テーブルを挟んで向かい合った愛と真理恵の間に、ファイルが置かれている。

真理恵がぱたんとファイルを閉じた。


「説明は以上。こんな感じかな」

「この部屋はレンタルなんですか?」

「そう。週に1回、ここを借りて相談者と直接会うの」

「警察署ではないんですね」

「もしストーカーが警察署に入っていく被害者を見たら、何をするかわからないからね」


なるほど、と愛は頷いた。


「最初は警察署でやる予定だったんだけど」


真理恵がにやっと笑う。


「逢坂くんが反対したの」

「逢坂さんが?」

「意外だった? 彼が言ったのよ。警察署に入るところをストーカーが見ていたらどうするんですか、って」


愛は黙って真理恵を見た。


「ほんとだって」


真理恵が笑いながら続ける。


「彼、意外と被害者のこと考えているのよ」

「うーん……」


愛の顔には、まだ納得しきれていない色が残っていた。

その時、ドアがノックされた。

真理恵がすっと立ち上がる。

愛も慌てて立ち上がる。


「どうぞ」
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