傲慢すぎる警視に衛られて愛される
愛の顔が一気に熱くなる。

その顔を見て逢坂がギョッとした。


「じょ、冗談だ。真に受けるな」

「わ、わわ、わかってますよ」


しばらく、点滴の落ちる音だけが聞こえた。

逢坂が愛に背を向けた。


「飯田奈美は?」

「お母さんに預けてきました。今日は一緒にいてもらいます」

「そうか」


また沈黙。

愛はようやく立ち上がり、椅子を引いてベッドの横に座った。


「逢坂さん」

「なんだ」


背を向けたまま答える。


「わざと、でしたか?」

「……」

「三浦に、わざと刺されたんですか」

「……」

「事件にして捕まえるために」


逢坂は何も言わなかった。

答えないのが、答えだった。

愛は膝の上で手を握りしめた。


「また、そんなやり方を」

「捕まえただろ」

「そういう問題じゃないです!」

「声が大きい、病院だぞ」


逢坂が振り返ると目を見開く。

愛は唇を噛んで涙を流していた。


「もう、私の周りの人が傷つくのを見たくないんです」


本当は現場でパニックを起こしそうになっていた。

愛は美憂のことがフラッシュバックして呼吸がうまく出来ていなかったのだ。

言いたいことが溢れてきて、でも上手く言葉にならなくて、愛はまた目が熱くなった。


「……馬鹿じゃないですか」

「そうかもな」


あまりにもあっさりと言うので、愛は逢坂を見た。

逢坂は起き上がり愛の涙を親指で拭った。

口の端だけがわずかに上がっていた。


「笑いごとじゃないです」

「わかってる」

「わかってないです」

「わかってる」


愛はため息をついた。


「お前が来るとは思わなかった」

「心配で」

「そうか」


逢坂は初めて見せる優しい笑顔を愛に向けた。


(なによ、その顔。反則じゃない)

「お前、もう帰れ」


ハッとして逢坂が愛の顔から手を離した。


「俺はもう少し寝ていたいんだ」

「わかりました」


愛は立ち上がる。


「ではお大事に」


その顔は真っ赤だった。
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