傲慢すぎる警視に衛られて愛される
愛はその光景を、黙って見ていた。

胸の中がざわざわしていた。

三浦は奈美を傷つけた。

それは変わらない事実だ。

でも今、目の前で泣いているこの男が、ただの怪物には見えなかった。


(だからといって、許せるわけじゃない)


愛は視線を手元に落とした。


(でも、この人も誰かに話を聞いてほしかっただけなのかもしれない)


それが、一番、やるせなかった。

カウンセリングが終わって三浦が退室すると、部屋に静寂が戻った。

早坂が何やらメモをしたあと、ゆっくりとファイルを閉じる。


「どうだった?」


愛はしばらく答えられなかった。


「……複雑です」

「そうだね」

「怒りたい気持ちもあって、でも」

「でも?」


愛は言葉を探した。


「かわいそうだと思ってしまった自分が、嫌です」


早坂は愛を見た。


「なんで嫌なの?」

「奈美さんのことを思ったら、そんな気持ちになっちゃいけない気がして」


早坂はしばらく愛を見つめてから、静かに言った。


「両方、感じていいんだよ」

「え?」

「怒りも、哀れみも、やるせなさも。全部、本物だから」


愛は早坂を見た。


「それが、キミが被害者に寄り添える理由でもあると思う」


愛は下を向いた。


「顔をあげて」


早坂が言っても上げられなかった。

早坂がそっと近づき、愛の顎を持って上にあげる。
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