傲慢すぎる警視に衛られて愛される
しばらく沈黙が続いた。

早坂はペンを置いて、三浦をただ見ていた。

何も言わなかった。

ただ、見ていた。

その沈黙が、三浦の何かを溶かしたのかもしれない。


「……俺、ずっと」


三浦の声が、かすれた。


「ずっと、孤独だったんです」


早坂は頷いた。それだけだった。


「仕事もうまくいかなくて、友達もいなくて。奈美だけが……奈美だけが、俺の話を聞いてくれたんです」

「そうか」

「別れるって言われた時、また1人になるって思ったら……気が狂いそうで」


三浦の目に、涙が浮かんだ。

愛はペンを握ったまま、動けなかった。


「誰かに話を聞いてもらいたかった。ただ、それだけだったんです」


三浦が顔を歪めて泣いた。

早坂は身を乗り出した。

ゆっくりと三浦の言葉を受け止めるように優しかった。


「よく、話してくれましたね」


その声は、愛が今まで聞いた中で一番、穏やかだった。


「三浦さんの孤独は、本物だったと思う。その気持ちは、本当のことだと思います」


三浦が嗚咽をこらえながら頷いた。


「でも」


早坂の声は穏やかなまま、続いた。


「奈美さんも、怖かった。それも本当のことです」


三浦が唇を噛んだ。


「……わかってます。わかって、るんですけど」

「うん」

「どうすればよかったのか、今でも」

「それを、これから一緒に考えましょう。時間はあります」


三浦がゆっくりと顔を上げた。

早坂は静かに微笑んでいた。


「先生、これからも俺の話、聞いてくれるんですか?」

「もちろんです」

「ありがとう、先生、ありがとうございます」
< 93 / 164 >

この作品をシェア

pagetop