無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
1.出会い

1.出会い


 大陸の西方に位置する豊かな国家、アルファール。
 木枯らしが冷たく感じる11月のある日、まだ生まれたばかりの王子が死んだ。

「可愛そうにねえ」
「でも、これでよかったんじゃないかい? 身分の低い側妃が産んだ王子なんて──」
「なんでも、正妃様が手を回したって噂があるらしいわよ」
「っし! 誰が聞いているかもしれないのに、滅多なことを言うもんじゃないよ」

 水汲み場の脇を一台の豪奢な馬車が近づいてくると、噂話に興じていた女達は、視線を送り合いながら声を顰めた。
 馬車に乗りながら耳を澄ませていたリディアは、隣に座る父──グリーン子爵のほうを振り返る。

「ねえ、お父さま。王子様はどうしてなくなったの?」
「さあな」
「病気かな?」
「そうかもしれない。昨日までは元気だったのに、突然のことだったらしい」 
「ふうん」

 どこか面倒そうに答える父の様子を見て、リディアは口をつぐむと再び窓の外に目を向ける。町を往来する人々は、いつもと変わらぬ様子だ。
 まるで、王子など元から存在しなかったかのように。

「あっ」

< 1 / 18 >

この作品をシェア

pagetop