無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 どちらも信じられないような話だが、事実だ。それも、同じひとりの青年に関する。

「それと気になる情報が──」
「今度はなんですか」

ダリウスは苛立ちを含む口調で聞き返す。

「レイという男ですが、グレーだった髪が銀色になりました」
「……銀色?」
「染めていたのかと」

 部下は頷く。

(銀色の髪……)

 脳裏に蘇ったのはかつて見た光景だ。
 豪奢なベッドの上で、小さな体は冷たくなっていた。
 泣き叫んで錯乱状態の側妃を、侍女達が必死に宥めていた。

(間違いない。あいつだ)

 ダリウスはレイという男こそ自分のフォシニだと確信する。

「はっ、ははは……っ」

 思わず大きな声で笑いを漏らす。
 部下の男はその様子を見てぎょっとしたような顔をした。

「もう私の魔法を打ち消したのか。大したものです」

 銀髪は珍しい。だからこそ、誰かに見られても素性がばれないように黒にしていたのに、こんなに早く効果が切れるとは。
 ダリウスはガリッと親指の爪を噛む。

(まずいな。このままでは、私の立場が危うくなる。それに、あのお方も──)

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