無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 セドリックは慈愛に満ちた眼差しを向け、座り込んでいる男に何か声をかけた。

「また人助けなさっていらっしゃるのね」
「さすがセドリック様だわ」

 その様子を見ていた女性達から感嘆が漏れる。
 セドリックは困ったように微笑んだ。

「いえ、私は大したことをしていません。ただ、恵まれない者を見過ごせないだけです」

 その声音に、吐き気がした。

(――嘘つき)

 リディアはレイと繋いだ手を強く握り締める。
 脳裏に浮かぶのは、婚約していた頃に見たものだ。

 誰にでも穏やかで優しく、完璧な紳士。けれど、実情は弱者を痛めつけることで快感を覚える最低の男だと、リディアは知っている。

「レイ、行こう」

 リディアはくるっと向きを変えると、レイの手を引いてずんずんと歩きだす。

「おいっ、リディア」

 セドリックは慌てたようにリディアの肩を乱暴に掴んで、引き留めた。

「離して」
「数年振りの再会なのに酷いな。積もる話もあるだろう?」
「おあいにく様ね。私は何も話すことなんてないわ。もう一生会わないほうがよかったくらいよ」

 リディアはキッとセドリックを睨み付ける。
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