無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 男は頭を下げる。丁寧なのにどこか高圧的な態度をにじんでおり、リディアは眉根を寄せた。

「何のご用件でしょう」
「単刀直入に申し上げます。あなたのところに、フォシニの青年がいますね? その彼を、我々にお譲りいただきたい」

 ドクンと心臓が鳴る。

「……譲る?」
「はい。もちろん、相応の対価はお支払いいたします」

 男はそう言うと、懐から封筒を取り出してリディアに手渡す。中には銀行小切手が入っていた。

 リディアは記された金額を見て、息を呑んだ。見たこともない額だ。
 店舗兼家となる建物を王都の中心部に購入しても、おつりがくるだろう。下手すると一生遊んで暮らしていけるかもしれない、そのくらいの大金だ。

「……何ですか、これは?」

 リディアは震える声で問いかける。

「あなたのフォシニの買い取り金額です」

 男は淡々と言った。

「あなたが彼を得るために支払った額とは、比べものにならないはずです。もう十分利用したでしょう」

 その言葉に、急激に胸が冷える。

 はした金で買ったものなら、高く売るはず。
 フォシニとして買ったなら、魔力を奪って利用するのが当たり前。

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