モフモフ王子様のお世話係になりました!~イケメン王子と秘密の共同生活~

14話 ここに来た理由②


――ガララッ! ドッスン!

大きな音に私は飛び起きた。
慌てて窓をのぞく。

月明かりの下、白と黒のまるい影が、もふもふゆれながら家の外へ歩いていく。

「え、リアン!?」

呼んでも返事はない。
その先には――竹やぶがある。

「まさか、夜食に竹を!?」

私は上着をつかんで、スリッパのまま外へ飛び出した。

◇◇◇


夜の竹やぶは静かで、暗くて、少しこわい。

でも、月に照らされた竹がきらきらして、どこか夢の国みたいだった。

「リアンーっ!」

返ってきたのは、むしゃ、むしゃ……という音。

白黒の影を見つけて近づくと、パンダがこちらをふり返る。
その瞳が切なく光った。

次の瞬間、体が淡く光り――。
リアンは人の姿に戻った。

「ひゃあっ!? びっくりした……!」

「すまぬ。驚かせたか」

相変わらず竹を持ったまま、やさしく微笑んだ。

人間の姿に戻っても服を着てくれていて、ホッとする。
月明かりの下のリアンは、本の中の王子様みたいにきれいだった。

「夜食しに来たの?」

「半分はそうだ。だが……竹を見ていたら懐かしくなってな。考え込んでいた」

「考え事?」

リアンは竹の葉を指でなでながら、静かに言った。

「……実は私は、日本に“兄上”を探しにきたのだ」

「……お兄さん?」

リアンはうなずく。

「第一王子である兄は、五年前、日本に来たきり行方が知れない。残された手がかりは――“パンダのぬいぐるみ”だけだった」

胸がどきんと鳴る。

リアンはスマホを取り出し、わたしに見せた。

「左目の縁がハートの形……見覚えがあるだろう?」

「それ……わたしが、作ったぬいぐるみ……」

わたしの声が震えた。
リアンは、まっすぐわたしを見つめる。

「君は兄上の手がかりを持つ、唯一の人物だ。だから、君の元へ来た」

竹がざわざわ揺れ、夜風が二人の間を通り抜ける。

「……そんな大事なこと、どうして言わなかったの?」

「迷惑をかけると思った。だが、もう隠すわけにはいかない」

リアンは竹を一本折り、空に掲げた。

「兄上を探し、必ず会う。それが私の使命だ」

昼間の調子者とは違う、王族の気高さ。
その横顔を見た瞬間、胸が熱くなった。

「……なら、わたしも手伝うよ」

言葉が自然に出た。
リアンが驚いた目を向ける。

「いいのか?」

「だって、そのぬいぐるみを作ったのはわたしだよ。知らんぷりなんてできない」

リアンはほっと笑った。

「天音は、優しいな」

「そういうの、反則だってば……」

二人で小さく笑い合う。

「でも、五年前のお兄さんの行方なんて、見つかるかな」

わたしの声に、リアンは強い瞳で答えた。

「必ず見つける。なにがあっても!」

その言葉に、胸がぎゅっと高鳴った。
隣の国から、身ひとつでお兄さんを探しに来たリアン。

(……ほんと、リアンって無茶するんだから)

月が竹の葉を照らし、二人の影が寄り添う。

「早くお兄さんと会えるといいね」

「……ああ。絶対に見つける」

月に照らされた約束は、夜の竹やぶに静かに溶けていった。
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