モフモフ王子様のお世話係になりました!~イケメン王子と秘密の共同生活~
5話 パパに見つかる!
――と、とうとう。

パンダを家に連れて帰ってきてしまった。

「ど、どうしよう……」

玄関で、もふもふの体を見下ろしながら、わたしは頭を抱えた。

「どう説明すればいいの!? パパに『ただいまー! パンダ拾った!』なんて言えるわけないじゃん!」

パンダは首をかしげる。

「いや、そんな『何が問題なの?』みたいな顔しないで~!」

「ぱん?」

「かわいい声出してもダメだからね!?」

ただでさえ、わたしの部屋はぬいぐるみでいっぱいだ。

そこに本物のパンダなんていたら絶対に信じてもらえない。

しかも――。

「まさか動物園から連れてきたんじゃないだろうな、とか思われたらどうしよう!」

「くぅ~ん?」

「うっ、可愛い! じゃなくて、わたしもなんでこんなことになったのかわからないよ」

わたしはパンダの背中を押しながら、こそこそと階段を上がった。

「しーっ、静かにね?」

「……」

「返事は?」

パンダはコクリとうなずく。

「うわっ、やっぱりわかってる!」

思わず小声で叫んでしまった。

なんなの、この子。賢すぎない?


部屋へ飛び込むと、わたしは急いでドアを閉めた。

「ふぅぅぅ~!」

緊張で足の力が抜けそうになる。

パンダはそんなわたしを見上げて、

「ぱん?」

と首をかしげた。

「心配しなくていいって? いやいや、心配しかないから!」

するとパンダは、ふわっとわたしの足にすり寄ってきた。

「ひゃっ!」

もふっ。

「わぁ……」

あったかい。

とっても、ふわふわだ。

ぬいぐるみとは全然違う。

「ねぇ、本当にわたしの言葉わかるの?」

パンダはコクリ。

「やっぱり!?」

わたしが驚いていると――


ドタドタドタッ!

階段を上がってくる足音が聞こえた。

「天音ー! 帰ったのかー?」

パパだ!

「今日な、お前の好きなプリン買ってきたぞー!」

「プリン!?」

思わず反応してしまう。

その瞬間、

「ぱん~♪」

パンダまで嬉しそうな声を出した。

「だめーっ!!」

わたしは慌てて口をふさいだ。

「しーっ! しーっ!」

パンダも慌てて両前足で口を押さえる。

「いや、かわいいけど今はそういうのいいから!」

ドアの向こうからパパの声。

「天音? なんか騒がしくないか?」

「き、気のせいだよー!」

わたしはパンダを抱えて、部屋の隅へ走った。

そして――。

ぬいぐるみの山へ、ぽすん。

「ここに隠れて!」

パンダは埋もれる。

もぞもぞ。

もぞもぞ。

「いや、そこ頭出てる!」

もぞっ。

「今度はお尻出てる!」

もぞもぞ。

「そうそう!」

なんとか擬態成功。

遠目には巨大なぬいぐるみに見えなくもない。

……たぶん。

コンコン。

「天音~?」

ドアが開いた。

「ど、どーぞー!」

ひょこっと顔を出したパパは部屋を見回した。

「うおっ。相変わらずぬいぐるみだらけだな」

「えへへ」

「なんか増えてないか?」

「き、気のせいだよ!」

「そうか?」

パパは目を細める。

わたしの背中に冷や汗が流れた。

すると――

ぴくっ。

ぬいぐるみの山が動いた。

「ぎゃああああ!」

わたしは反射的に叫ぶ。

「な、なんだ!?」

「む、虫! たぶん虫いた!」

「そんな大声出すほどか?」

「おっ、おっきい虫だったの!」

パパは首をかしげた。

「なあ、さっきから、この部屋動物園みたいな匂いしないか?」

「えっ!?」

わたしの顔が引きつる。
パパってこういう時はすっごく鋭いんだ。

「気のせい気のせい!」

「そうか?」

「そ、それよりプリンは!?」

「ん?」

「プリン食べたい!」

「お、おう。下の冷蔵庫にあるから、一緒に食べるか?」

「わーい!」

パパは苦笑しながら部屋を出ていった。

足音が遠ざかる。

しばらくして――。

「ふぅぅぅ……」

わたしはその場にへたりこんだ。

「危なかったぁ……」

すると、ぬいぐるみの山がむくっと動く。

ひょこっ。

パンダが顔を出した。

「ぱん?」

「うん、大丈夫だったよ」

わたしが笑うと、パンダもどこか嬉しそうだった。

そして鼻先で、

つん。と、わたしの手をつつく。

「え?」

つん。つん。

「もしかして……ありがとう?」

パンダはコクリ。

「うわぁぁぁっ!」

わたしは思わず抱きついた。

「かわいいーっ!! もう、国宝級のかわいさだよ」

ぎゅうううっ!

すると、

「ぱっ!? ぱぱぱっ!!」

パンダが急に大暴れした。

「えっ!? どうしたの!?」

バタバタバタッ!

「苦しい!? 暑い!? 抱っこ嫌いだった!?」

わたしが離れると、パンダは一目散に逃げ出した。

そして――。

ぽふっ。

ぬいぐるみの山へダイブ。

もぞもぞ。

もぞもぞ。

完全に埋まった。

見えているのは丸いお尻だけ。

「ぷっ……」

思わず吹き出す。

「そこ気に入ったんだ?」

お尻がぴこっと揺れた。

「返事した!」

なんてかわいいんだろう。

耳の先からしっぽの先まで、全部がかわいい。

ずっと見ていたくなる。

でも――。

「だめだめ!」

わたしは立ち上がった。

「のんびりしてたら、またパパが来ちゃう!」

ぬいぐるみの山から顔だけ出したパンダが、じーっと見ている。

「わたしは着替えてプリン食べてくるからね」

「ぱん♪」

「勝手に部屋から出ちゃダメだよ?」

パンダはコクリとうなずいた。

「よし、いい子!」

……たぶん。

わたしはこの時、まだ知らなかった。

この“いい子なパンダ”が、このあととんでもない騒動を巻き起こすことになるなんて。
< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop