君が照らす人生は、いつだって温かい
◇
でも同時に、別の感情も浮かび上がる。
「……私、歌、そんなに上手じゃないですよ」
「知ってる」
「知ってるって……」
「いい意味でね」
春日井先輩は、すぐに付け足す。
「プロの歌手みたいに完璧な歌、俺たちは求めてないからさ。空き教室で、〝ここにいる〟って証明しようとしてた声があれば、それでいい」
その言い方が、
くすぐったくて、こわい。
「それに」
春日井先輩は、少し笑った。
「俺もギター初心者だし。美由紀もドラムは齧《かじ》った程度。大谷木さんもベース未経験。全員、ほぼスタートライン一緒なんだよ」
〝中途半端〟という言葉が、頭をよぎる。
「でも、今年の文化祭までは、まだ時間ある」
窓の外の校庭に視線を向ける。
「練習して、ケンカして、ちょっとずつ形になって。〝これから始まる続き〟を、ステージでやれたらいいなって」
『これから始まる続き』。
川沿いの暗闇。
空き教室の西日。
病院の白。
それら全部の先に、
ライトの当たるステージがある光景が、
頭の中にぼんやり浮かぶ。