君が照らす人生は、いつだって温かい
第十章
ちゃんとやる
義母は、
カレーの鍋からおたまをゆっくり引き上げた。
「バンド?」
短く繰り返す声には、
少しだけ警戒が混ざっていた。
「うん。学校の先輩や友だちと」
自分の声が、
思ったより震えていないことに、少し驚く。
義母は火を止めてから、
コンロの前で腕を組んだ。
「軽音学部に入るとか、そういうこと?」
「部活じゃなくて、文化祭に向けての〝有志バンド〟みたいなやつ」
言いながら、
自分でも『ちゃんと説明できてるかな』と不安になる。
「メンバーは?」
「ボーカルが私で、ギターが春日井先輩、ベースが瑠奈で、ドラムが夏目先輩」
「……なるほど」
義母は、少しだけ目を細めた。
名前を出した順番だけで、
何かを察したような顔。
「バスケ部の子よね、〝春日井くん〟って。高校のホームページで見たことあるわ」
「うん。でも、今怪我してるの。靭帯断裂とヒビがはいってるって」
その一言で、
病院の白いカーテンと、
あの日の鈍い音がよみがえる。
「大変ね。ちゃんとリハビリしてる?」
「うん。松葉杖で学校来るくらいには」
義母は、
ほっとしたように小さく息をついた。
そして、少しだけ表情を引き締める。