君が照らす人生は、いつだって温かい
「二曲目は、オリジナル曲です」
言った瞬間、喉がきゅっとなった。
「タイトルは、『今日まで生きてきたんだよ』っていいます」
ライブハウスの空気に、
その言葉がふわっと溶けていく。
「ちょっと重たいタイトルなんですけど」
自分で自分にツッコミを入れる。
「でも、〝今日まで生きてきちゃった人〟の歌なので、よかったら聴いてください」
ドラムが、静かにカウントを刻む。
ベースが、低く支える。
ギターが、優しくアルペジオを鳴らす。
私は、マイクに向かって息を吸い込む。
「今日まで生きてきたんだよ あの夜 川沿いで 欄干に置いた手のひらが 冷たくて笑った」
最初の一行で、少しだけ声が震えた。
でも、ライブハウスの空気が、
その震えごと飲み込んでくれる気がした。
サビが近づく。
「今日まで生きてきたんだよ ここまで来ちゃったんだよ だからもう少しだけ 今日を続けてみようか」
『みようか』で、ほんの少し音程を外した。
でも、ドラムは止まらない。
ベースも、ギターも。
〝止まらない練習〟、してきてよかった。
ブリッジで、
春日井先輩の短いギターソロが入る。
指がちょっともつれて、
「あっ」と小さく言った声が、たぶんマイクに乗った。
客席から、笑いと拍手。
その瞬間、胸の奥がきゅんとした。
――この人と一緒にやれて、よかった。
そんな言葉が、歌詞の外側で生まれていた。
最後のサビ。
「今日まで生きてきたんだよ それでも迷ってるけど ここで歌ってる間だけは ちゃんとここにいるから」
歌いながら、自分に言い聞かせていた。
最後のコードが鳴り終わる。
一瞬の静寂。
それから、拍手。
体育館とは違う、近い拍手の音。
見知らぬ大人の人たちも、
手を叩いてくれている。
「ありがとうございました!」
深く頭を下げると、
ステージの床に小さな汗のしずくが落ちた。