君が照らす人生は、いつだって温かい
◇
ステージに上がる直前、
ふと客席のほうを見る。
体育館の後ろのほう。
出入り口の近く。
そこに、見慣れたシルエットがあった。
仕事帰りらしく、
きちんとしたブラウスにパンツ。
髪を後ろでまとめた、義母。
観覧券を片手に、
少し落ち着かなそうに立っている。
目が合った。
義母は、わずかに目を見開いて、
すぐに口元をほころばせた。
小さく、手を振る。
それだけで、胸の奥がじんと熱くなる。
――ちゃんと来てくれた。
それを確かめた瞬間、
足の震えが少しだけおさまった。
「山谷さん」
袖から出ていこうとしたとき、
春日井先輩が呼び止める。
「今日さ」
「はい」
「〝うまくやろう〟より、〝ちゃんとここにいる〟ほうを、優先しよう」
その言葉は、あの日と同じだった。
川沿いの夜。
欄干。
『今日まで生きてきたんだよ』。
全部が、一気に喉の奥までせり上がってくる。
「……はい」
うまく笑えたかどうかは、分からない。