2度目の初恋、始めます♡
「ひよりちゃん、おめでとう!」

「大会、2位と1位だって?すごいじゃん!」
 
 夏休みが終わり、新学期の学校に行くと、何人かの先生にそう、声をかけられる。

「ありがとうございます」

 なんか恥ずかしいな。
 いろんな人の目線が自分にある気がして。
 
 担任の先生によると、今日、体育館である全校朝会で、表彰式が行われるらしい。

 だからか、大会で入賞できた私、結菜、先輩2人は舞台の近くに座らされた。

(どうしよう……緊張してきた)

 緊張で胸がバクバクと大きな音を立ててなった。
 

 最後の方で、エルガーの威風堂々がスピーカーから流れる。

 校長先生は「水泳大会で入賞した生徒は前に出てきてください」といった。

 私達は緊張しながらゆっくりと前に出る。

 幹太先輩がメドレーリレーの賞状を、結菜がトロフィーを、私と優心先輩がそれぞれの賞状を受け取った。

「入賞おめでとう。これからも頑張ってください」

「ありがとうございます」

 体育館はいっぱいの拍手で包まれた。


 一日で最後の授業が終わり、私が帰りの準備をしようと賞状を持ってくると、私の席の前に春夜が来た。

「どうしたの?なんか用?」

 声をかけると、春夜は「ちょっと来て」と言いながら私の手をひっぱって進んでいく。
 
 私は賞状の入った筒を急いで机に置いた。 
 
 春夜は小学校の頃から特に仲の良い男友達。

 春夜にはりっちゃん(莉萌(りほ))っていう彼女がいて、りっちゃんが春夜に告白する時やそれからもいろいろな相談に乗ってきたから、私の恋愛相談も聞いてくれるんだよね。
 
 春夜の後ろをついていくと、使っていない教室に入った。
 
 中には同じ小学校、隣のクラスで仲のいい、山下阿月(あつき)上田碧(あお)くんもいる。

 ……?

 どうしたんだろう。

 そう思った時、阿月が声に出す。

「あのさ。桜庭さんこの前、蒼に会ったの?」

 なんで知ってるんだろ……。

 合ってるけど。
 
「うん。なんで知ってるの?」

 私の質問に今度は碧くんが「本人からTalkieで聞いた」と答えた。

「ふうん、そう……で、どうしたの?」

「直球で聞くけど、蒼のこと、まだ好きなの?」

 ……へ?

 私が蒼のことが好きだったのは3人とも知ってる。

 何を聞かれるかと思ったらそんなことだったんだ。

 ……でも、なんか答えにくい。

 好きなの、【かも】しれない。けど。
 
「で、どうなの?」

「ん〜、どうだろう。分かんないや」

 これは私の嘘。

 嘘ついちゃいけないのは知ってる。
 でも、今は嘘しかつけない。

 あんまり広めたくないから。
 
(ごめんなさい)

 なのに。
 
「嘘でしょ」

「はっ……!?」

 春夜が言った。
 
 頑張ってついた嘘が、こんな一瞬で見破られるなんてっ。

「嘘でしょ、それ。本当は蒼のこと、まだ好きでしょ?」

 そうだよ。
 そう言いたいのに。

「……うん」

 その一言でしか答えられなかった。

 すると。
 
「「「よかった」」」

 3人の声が揃う。

 ………え?

 どういうこと?

「よかった」って。
 みんな口を揃えて。

 それから阿月が言った。
 
「あのさ。蒼は5年の頃に桜庭さんを振っちゃった事、まだ後悔してるんだよ」

 え……。

 そうだったんだ。

 私と一緒。
 蒼も一緒だったんだ。

 私も卒業前にもう一度告白すればよかったって思ってる。
 
「桜庭さんも、そうでしょ?」

「うん。でも……」

 私は言葉を詰まらせた。

 なんて答えたらいいかがわからない。
 
「……やっぱり、まだ残ってる?理響(りおと)のこと」

 私は静かに頷いた。

 私の目線の先、教室の外の廊下には笑顔で歩いている男子が一人いた。

「あー!本人だ。どうせ今日もデートでしょうね」

「あ、ちょっと阿月!それ禁句だって……!」

 碧くんが阿月を止めようとしたが、もう手遅れだった。

 そう。私は理響が苦手。というか嫌いなんだ。

 今までのことを少しみんなに話すね。


 私は小6の時、ある男子に告白された。

 それが理響だ。

 当時、私にも理響にも好きな人がいた。

 私の好きな人は蒼。

 理響の好きな人は同じ小学校にいる、だけど途中で引っ越して別の中学に進学する事になった萌花(もえか)ちゃんだった。

 でも私は、蒼に一回振られたし、恋愛を諦めていた。

 理響も、理由は少し違うが恋愛を──萌花ちゃんを諦めていたみたいだった。

 私は蒼を好きになる前、3、4年生のときに理響が好きで告白したことがある。

 そのとき、理響にはOKされたんだけど、告白を手伝ってもらった友達が学年中にその情報をばら撒いたんだよね。

 だから自然破局してしまった。

 そんな、昔好きだった彼から告白されたのだ。

 だから、私は理響に告白されてOKをしてしまった。
 
 付き合っている期間は理響の家に行ったりして、よく一緒に遊んでいた。

 でも二2月後に振られてしまった。

 その理由が「1番好きな人を決めた」だった。

 そう。
 理響には好きな人が何人もいたんだって。

 いまだに信じられない。

 後から聞いた話、理響は好きな人が最大で5人もいたらしい。

 私もその中の一人だったと思えばゾッとする。

 ましてや、好きな人の中でもランキングを作って、「No.1」「No.2」と呼んでたらしい。
 
 それから彼とは何一つ話していない。

 理響はそれから萌花ちゃんに告白し、人生で3人目の彼女ができた、というわけだ。

 萌花ちゃんとはいまだに仲が良くて、週3くらいでデートをしているらしい。

 2人とも帰宅部だから暇なんだろうな。

(あんなにニヤニヤしちゃって!)

 こっちは長らく恋愛ができない身になったというのに。

 そう考えるとムカついて仕方がない。

 こういう事があったから、理響の顔を見るのは今でもうつになる。
 
「なんか……ごめんね」

 阿月が、全く喋らなくなった私にあやまった。

「ううん。大丈夫だよ……でも本当に蒼は後悔してるの?」

「うん!本当だよ。ね?」

 阿月が他の2人に聞いた。

 二人は大きく頷いた。

「そうだよ!!桜庭さんが引っ越してからも『告白したほうがいいかなあ』とか『でもなあ』とか、ずーっと言ってたんだよ!しつこいくらいに行ってきたんだからね!」

 春夜がいう。

 そうだったんだ。

 ずっと悩んでくれてたんだ。

「だからお願い」

 碧くんもいう。

「あいつと一緒にいてあげてほしい、これからもずっと」

 3人とも真剣な目をしていた。

(蒼はみんなから愛されてるんだなあ)

「……もちろん、そのつもりですけど?」

 私がそう答えると3人の目は輝き出した。

 そして、春夜は嬉しそうに言った。
 
「ありがとう」と。

 私はその言葉が頭から離れなかった。

(いいなあ。蒼はみんなから愛されてるんだな)

 そう感じた。


 その2日後、蒼から「みんなで映画に行かない?」とメッセージが来た。

ひより)「みんなって?」

 私がそう送ると「阿月と春夜と碧も」と返信が来る。

 そのことから私は察した。
 どうせ、その3人が早く付き合うようにって裏で企画してるんだろうと。

ひより)「いいよ」

 私の返信を待っていたかのようにすぐ、「やったー!」と叫んでいる犬のスタンプが送られてくる。

 それから3分後、グループチャットが作られていた。

 すぐに男子の‘‘スタ連(スタンプ連打)’’が始まった。

 ピコンッ!ピコンッ!

 ピコンッ!

 ピコンッ!

 着信音が部屋に響く。
 
 ん〜!もう!
 うるさい!!

ひより)「うるさい!!スタ連すなっ!」

 私が送るとみんなから「ww」だとか「笑」だとかいう文字やスタンプを送ってくる。

(もう!結構本気なのに!)

 そう思っていると、碧くんからメッセージが来た。
 
碧)「映画、いつ行く?ていうか、BEBEでいいよね?」

 私はYESと言いながら親指を立てている女の子のスタンプを送った。

 【BEBE】というのは私達の家の最寄駅の隣にある施設のことだ。
 いろんな飲食店やゲームセンター、映画館がある。

 ショッピングモールとは少し違うらしい。

蒼)「なんの映画がいい?」

ひより)「私は‘‘ 放課後の弾丸’’がいい!」
 
 放課後の弾丸とは先週に公開された映画で、すごく気になっている映画なんだ。

蒼)「いいじゃん!俺も放課後の弾丸がいい」

 蒼以外のみんなもそれに賛成し、何を見るかは決まった。

 問題はこれから……。

阿月)「いつにする?俺はいつでもいいけど……」

春夜)「平日はあんまりだよな。俺はできれば日曜日がいいな。土曜日は15時からしか無理だから」

蒼)「俺は土日だったらいつでも。部活は土日はないし」

碧)「自分は春夜と一緒」
 
 ……そうなんだよなあ。

 こんなに人数いると全然時間が合わないんだよね。
 
 ましてや、他の学校の人もいるとなると余計難しいよね。
 
 阿月は帰宅部、春夜と碧はサッカー部。
 蒼は何部か知らないけど、白鳳は家から遠いから平日は無理。

 でも……。

ひより)「私は土日は大体無理かなあ」

 私の水泳部は毎日、大体が練習だし、月・水・木・金曜日は習い事があって無理なんだ。

蒼)「そっか」

ひより)「でも、14日の日曜日と15日の祝日は行けるよ。みんなはどう?」

 私の質問にみんながOKと答えた。

ひより)「じゃあどっちにする?」

 
 こうして行くのは15日の10時に駅前集合になった。 

 すると、またTalkieの着信音がした。

(ん?今度は誰?)

 Talkieを開くと……蒼からの個人チャットだった。

蒼)「ねえ、15日。一緒に駅まで行かない?」

 え……っ。

 嘘、やったっー!

 私は心の中で大叫びする。

 しかも私もそう言おうと思ってて。

ひより)「うん。私も同じこと考えてたから嬉しい」

 蒼も同じこと考えてたんだと思うと嬉しかった。

 私はグループチャットができた後、蒼とも一緒にきたショッピングモールに来ていた。

 前来た時に欲しい本を買えなかったから買おうと思って。
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