2度目の初恋、始めます♡

5話 気になるあの子〜side 蒼〜

 俺は大会後、ひよりと別れて家に帰ったあと、ずっと部屋のベッドに寝転び、天井を眺めていた。
 
(……ひよりは、2位か)

 正直、すごいと思った。
 いや、「すごい」なんて言葉じゃ足りない。

 もっと、すごいを遥かに超えた、そんな感情。

 女子200メートルのフリーで、ひよりの名前が呼ばれた瞬間、俺はなぜか、すごく嬉しくなった。

 プールサイドに降りていくひよりの背中は、自身がありげで、小学生の時と同じだった。
 ひよりはリーダー性があって自信家で、周りのみんなを──俺を照らしてくれる、そんな【特別な存在】だったと思う。
 
 どういう存在かは今も変わっていない。 

 ──でも、もちろん変わっているところも、ある

 例えば背の高さ。

 卒業式の時は、ひよりの方が俺より3、4センチ高かった。
 
「やばい!もうそろそろ、抜かされちゃうね」 
 
 小学校最後の身体測定は一月で、その時にひよりが俺にいった。

 ひよりは当時161センチジャスト、俺は158センチだった。

 一緒に並んで帰る時も俺は、数センチ低いところからひよりを見上げていた。

 それなのに今は、俺の方が高い。

 俺が少し上からひよりを下に見て、ひよりが下から俺を見上げるようになった。 

 それに、並んで歩くときの距離。

 俺たちの間の距離は確実に変わっていた。

 小学校3・4・5年と6年のラスト1ヶ月までの合計47ヶ月は学校からの帰り道、毎日春夜とひよりと一緒に、途中の商店街まで帰ってた。

 春夜はひよりと同じ町内で、最後の曲がり角までひよりと一緒だった。

 けど俺は商店街の入り口までしか同じじゃなかった。
 
 だから全然一緒にいられなかった。
 
 あと、その時は俺とひよりの間に春夜がいた。
 
 俺が恥ずかしくてひよりの隣には行けなかったから。

 最初の方は春夜も「隣に行けよ」といってくれたが、度々それを断っていた。

 本当は隣に行きたかったのに。
 
 だからいつからか、春夜は何もいわずに俺とひよりの間に入るようになった。

 ひよりの隣という席はいつでも、春夜で当たり前だった。

 その頃は、断ってしまう自分が悔しかった。
 当たり前のようにひよりの隣に行ける春夜がうらやましかった。

 でも、今は違う。

 ひよりの隣は空いている。

 そこに、俺はどうしても入りたい。
 そう思った。

 
 白鳳に入ってからの毎日は忙しかった。
 
 小学生の友達とは会えないし。

 スケジュールもハードだし。
 
 まだまだ、全員と仲がいいわけじゃないし。

 でも、山本さんと隣の席になれたことが幸運だった。

 山本さんは明るくて活発で、クラスを引っ張るような人。
 
 だから、他の女子とも少しだけれど話すようにはなった。

 山本さんは普通に話せる【友達】。
 隣の席だし、悪い子じゃない。
 
 でも、ひよりと再会してから、何かが変わった。

 何でかは分からない。
 
 山本さんがどういう存在かが、分かった気がした。

 ただの友達だってことに改めて気付けた。
 
 いつも無意識にスマホを手に取ってしまうし、「部活どう?」「無理すんなよ」そんな短い言葉もひよりに送りたくなる。

 大会前に「行ってもいい?」と送ったときもそうだ。

 応援したい気持ちは本当だ。
 でも、ひよりの隣にいたい気持ちが1番だった。

 ファミレスで、「次の大会も、見に行っていい?」って断られる覚悟で聞いてみた。
 
 でも。

「蒼が来てくれたら嬉しい」

 その一言で、俺の心は全体が光に包まれた。

 それは本当……?

 見にいってもいいのか……?

 好きだったのに、告白できなかったことに、ずっと後悔していた。

 これからは伝えれるように努力していこうと思う。
 
 スマホを取り出して、Talkieを開く。

蒼)「今日は本当にすごかった。泳いでるひより、かっこよかった」

 送信してから、少しだけ緊張する。

 すぐに、返信が来た。

ひより)「ありがとう。蒼が見てくれてたと思うと、頑張れた」

 嬉しかった。

 
(……次は)

 次は、ちゃんと。
 言葉で、伝えたい。

 いつかは俺から「好きです」って伝えたい。

 前に振っちゃったから、今度こそは俺から、俺の口から伝えよう。

 きっといつかは、自分の口から告白するんだ。
 
 俺は心の中で、1人、そうつぶやいた。
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