台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
♡
「俺、料理ってあんまりしたことなくてさ。
包丁触るのも、マジでいつぶりかわかんないかも」
隣に並ぶ紫苑がピーマンを一つ手に取って、困り顔でそれを眺める。
ネイビーのカフェエプロンを羽織る王子顔のイケメンを前に、ここはお洒落なカフェかと錯覚しそうになる。
そのくらいキッチンに立つ様が馴染んでるくせに、料理ダメとか何狙いのギャップなの?
「へー、そうなんだぁ。紫苑くんにも苦手なことってあるんだね」
「あるある。むしろない人なんていないでしょ」
ちょっと屈んで下から見上げてみたのに、動じない。
伏し目がちに微笑む余裕そうな顔は、やっぱり強くて内心ぐぬぬと歯噛みした。
「えー。じゃああと何が苦手?
あっお野菜はどう?ピーマン食べれる?タマネギは?」
「なんか子供扱いしてない?食べれるって。
野菜好きだよ」
両手に野菜を持って、紫苑とぐっと迫る。
屈託なく笑いながら、目の前に突きつけた野菜から逃れるように紫苑は顔を逸らす。
――うん、結構楽しくいちゃつけてない?
さりげなくテラスの方を盗み見る。
説明書を手にした美玲が、ちゃんとこっちを見て複雑そうな顔をしていた。
……しっかりカメラに抜かれながら。