台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

爽真の目は、瞬きを忘れたように私に縫いついて動かない。

少しして、薄い唇が静かに空気を取り込んだ。

「……怒ってる?」

「別に。ただ面白くはないなって思う」

ふっと爽真から視線を外すと、彼の緊張がようやく緩む。

ぶらつかせたつま先を見つめて黙った私の顔を、爽真がそっと覗いた。

「白石に悪意があるとは限らないだろ」

「庇うんだ?」

「そうじゃない」

私を見上げるみたいになっている爽真を見る。
夜の空気が似合う澄んだ漆黒の瞳が、真っ直ぐに私を見ている。


「白石もただ役割を全うしてるだけなら、
瑠奈が不必要に傷つかなくていいだろって話」


……きょとん。
なにそれ。まるで私が傷ついてるみたいな言い方じゃん。


ぐいっと真顔で爽真の頬を押す。
爽真の顔もきょとんとして、なすがままになって離れていく。

「……なんなの?」
「いや、なんとなく」

怪訝そうな顔。ほっぺ潰れてるけど。
なんかまぬけでちょっと笑える。

「……ところで爽真って、なんでこの時間は他の人のこと苗字で呼ぶの?」

「…………。別に、なんとなく」

「私のことは瑠奈なのに?」

「お前が爽真って呼ぶからだろ」

「なるほど?こりゃ一本取られたわ」

くすくすと、声をひそめた笑いが闇に溶ける。
月明かりに照らされた夜が、今日も静かにすぎていった。
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