台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
(――紫苑!)
びっくりして止まりかけた頭を無理やり起動させて、
演技スイッチを入れた。
「ふあっ……びっくりしたぁ。
だめだよ紫苑くん。ちゃんとノックしないとー」
ヘアアイロンのスイッチを切って、洗面台に置きながら“めっ”と言う顔をする。
……ていうか、巻き髪半分しかできてないんですけど。
かなりまぬけなビジュになってない?今の私。
さりげなくストレートなままの髪を、後ろに流して誤魔化す。
「……?」
紫苑のことだからサッと出ていくのかと思いきや、ドアの前に立ったまま全然動かない。
愛想よく微笑みながら、なんで?と首を捻った。
ちょっと慌てているように見えた紫苑の顔に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。
一歩二歩、とゆったりとした足取りで私の目の前に迫ってきた。
あれ……?いつもと雰囲気違くない?
王子様のキラキラ感がないというか……
胸がざわりとした時。
華奢な長い指が、巻きのかかっていない私の髪を掬った。