台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「――し、」
ぎこちなく開いた唇が、時間をかけて声を乗せる。
その勢いで、きゅるっと上目遣いをして眉を顰めた。
「紫苑くんのばかっ!
瑠奈だって清楚なの着けるもんっ」
ぽか――――ん。
紫苑の顔がまさにそんな感じになる。
(よしっ今だ!)
急いでポーチをまとめて、ヘアアイロンも抱えて紫苑と洗面台の間から抜け出す。
――コン、とリップがメイクポーチの隙間から、滑り落ちたことには気付かない。
ぷんっと怒ったふりをして、パタパタと脱衣所から走って逃げ出した。
わかる!わかるよ、私だってぽかんだよ!
なんだってこんなことに!?
暗い廊下やリビングを抜けて、一目散に女子フロアの階段を駆け上がる。
「瑠奈ちゃん……!?どうしたんですか?
ボロボロですよ!?」
「いや、別にぃ……なにもないよっ?」
部屋に入ると、目を丸くしたひよりが心配そうに駆け寄ってくる。
肩で呼吸を整えながら、とりあえずの笑顔を作った。
――明日から、恋リア生活2週目が始まる。
すでに波乱の予感がした。