台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――19:00
「巻さん、今日分のカメラチェックお願いします」
「ん」
初日に私が呼び出された仮設のプレハブ部屋で、総合演出の巻はゆったりと椅子に座っている。
「今回はかなり撮れ高ありますよ!
美玲を巡る爽真と紫苑の三角関係!巻さんの求める構図が期待以上で撮れてます!」
巻さんの傍に立つディレクターは上機嫌で映像を再生する。
真っ黒だった画面に、昼間のビーチが映し出された。
「紫苑くんの安定の王子感はもちろん、
爽真くんの圧のある表情が、結構いい仕事してて――……」
興奮気味に語るディレクターの声をBGMに、巻さんは口元に手を当てじっくりと映像を眺めている。
爽真たちが美玲を取り合う様子に頷き、
コメディタッチでむくれる私の抜きに頷き、
爽真と美玲のいい雰囲気にも頷き。
私と紫苑のやりとりと、紫苑と美玲のやりとりを観たあたりで、巻さんはディレクターの方を見た。
「成宮くんと白石さんが絡んでる時、香月さんと瀬名くんは単独だったの?」
「あぁ、いえ。2人一緒でした。
……と、いうか。そこは一件事故報告がありまして……」
ディレクターが途端に気まずそうな顔になる。
巻さんの顔色を伺いながら、私が溺れかけて助け出されるまでの経緯を話した。
「瑠奈ちゃんの話によると、うっかり浮き輪から手を離した時に波が来てパニックになったと。
紫苑くんがすぐ引き上げてくれたおかげで、大事には至らなかったそうです」
「ふーん。映像は?撮ってる?」
巻さんが安堵と徒労混じりのため息を漏らしながら、背もたれに深く凭れる。
腰を低くしたディレクターが、苦笑いで答えた。
「いえ。その時瑠奈×紫苑のシーンを撮り終えた後でしたので……
スタッフが駆けつけた段階のものなら、あります。
遠くから撮ったので粗いですけど」
ディレクターが映像を切り替えると、爽真に抱き抱えられて岸に上がる私が映る。
生々しい事故現場のような状況を、俯瞰して撮った映像。
巻さんは、じっと画面を見つめて言った。
「……瀬名くんが、わざわざ香月さんを助けに行ったってこと?」