台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「あ、はい。そうです。遠目に沈んだのがわかったみたいで」
それを聞いた途端、巻さんの目が“何か”を察したように細くなる。
口元に当てた手が思案するように顎を撫でて、再び映像に視線を落とす。
画面の中の私たちのことを見て、ストーリーの逸脱の気配にピリッと空気を張り詰めさせる。
しばらく黙り込んでいた巻さんが、小さく唸った。
「明後日の花火大会ロケ――
紫苑×美玲、爽真×瑠奈でいこうと思ったけど、ペアを逆にしよう」
突然決定事項かのように言い始めた巻さんに、ディレクターが慌て始める。
「いいんですか!?あれ、今期のメインイベントですよ!?
メインカップルを1番盛り上げて、ライバルの嫉妬も煽らないと……」
「いや、いい。そこで爽真→美玲に決定打を打たせる。
瑠奈→紫苑も強化するように上手く指示出ししておいて」
わたわたと進行表を捲り始めるディレクターに、巻さんはあっさりと背を向ける。
夕飯を囲んで思い出話に花が咲くシェアハウスのすぐそばで、そんな不穏な会話が動いていた。