台本通りの恋はしない!



着いたのは、家の側に建っているプレハブ小屋。

巻さん専用の部屋らしい。
ものが散らばるデスクひとつと、複数のモニター。

冷房がガンガン効いていて、プレハブのくせにうちのオンボロ事務所より快適だ。

ピカピカのパイプ椅子に、巻さんはどっかりと座る。

それからはぁーっと大きなため息をついて、
部屋の真ん中に立たされた私を睨んだ。


「困るんだよ。勝手に共演者と仲良くされちゃ」


「は?」

思わず間抜けな声が出た。
そのくらい、今言われたことは理解不能だった。

それがしっかり顔にも出ていたようで、巻さんはイライラして前髪をかき乱す。


「君の役割、理解してる?
空気読まずに場を掻き乱すクラッシャー。完全な嫌われ者。
それが君に依頼した仕事なの」


――物を見るみたいな目。

番組が盛り上がれば、私はどうなってもいいってこと?


「視聴者はリアルなドラマを求めてるんだ。
なのに裏で君が共演者と打ち解けてたら、画面がヤラセっぽくなるだろう」

今まで燃えていた闘志が、スッと冷めていく。


「美玲と紫苑の純愛を邪魔する君が、嫌な奴であればあるほど2人の恋は盛り上がって光る。
そういう絵を撮りたいんだよ、僕は」

凍った心に、ガツンとトドメ。


あーあ。結局。

脚光を浴びるヒロインは、最初から決まってるってわけね。


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