台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――その頃、ラックの向こう側では。
「爽真くん、この色ならどう……」
爽真の元に何着目かの浴衣を持ってきた美玲から、嬉しそうな笑顔が消える。
待ちぼうけになっていた爽真が、向こう側にいる瑠奈と紫苑を見ていたせいだ。
カメラの前だというのに、自分に気づく気配もない。
複雑そうに切なそうに、紫苑に向かう瑠奈の笑顔に意識を奪われていた。
浴衣を抱きしめる美玲の手に、無意識に力がこもる。
俯いた顔は唇を噛んで、胸の痛みをグッと堪えた。
「爽真くん、お待たせ。
ぼーっとしてた?疲れちゃったよね」
だらんと力なく垂れていた爽真の手を、そっと握って意識を自分へ取り戻す。
不穏を引きずったままの切れ長の目に美玲が映ったのを見て、彼女はふっと口元を緩ませた。
「……浴衣、持ってきたんだけど……
やっぱりさっきのがよかったかな。これ、深い藍色のやつ……」
すぐそばにキープしていた、藍色の浴衣を爽真に差し出す。
「……うん。やっぱりこれがいい」
痛みを隠して綺麗に微笑む美玲に、爽真はなにも返さない。
ただ黙って、差し出された浴衣を受け取るだけだった。