台本通りの恋はしない!

睫毛が伏していた紫苑の目が、初めて僅かに大きくなる。

顔色は――変わらないか。


でも、ごくりと息を呑んだ音は聞こえた。


再び潮騒が聞こえ出す。

紫苑は何も言わない。
でも、態度も変わらない。

もうひと押しな感じもするけど――
正直、これ以上の攻め方がわかんないや。

笑顔を貼り付けたまま、紫苑の反応を待つ。


長い。早く何か言って欲しい。
じゃないとカメラが止まらない。


「び、……」
「び?」

ようやく紫苑の唇が小さく動く。

けど一文字。内心訝しんで、可愛く首を傾げた。


「……っくりした!距離近すぎじゃない?」


紫苑は爽やかに笑いながら、一歩下がる。

嘘でしょ?全然効いてない。

あんな小さい反応じゃ、テレビに映っても気付かれないじゃん。

「そろそろ戻ろうよ。みんな待たせちゃってると思うし」

「……うん。ソウダネ……」


蜂蜜色の髪を陽光に反射させて、綺麗に笑う紫苑に脱力しそうになる。


こいつ、絶対奥手じゃない。

鉄壁すぎて、ちょっと心が折れそうになった。
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