台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「入るからね?」
自身と爽真の部屋のドアを、返事を待つ前に無遠慮に開け放つ。
すでに着替えを終えていた爽真が、ぼうっと椅子に座って紫苑の方を見る。
西日を受けても微動だにしないその無機質さが、紫苑の苛立ちを煽った。
「……堂々とサボり?着替えたなら戻ってきなよ。
撮影中なんだけど」
ドアが開く音で反応した爽真の視線が、返事もせずに紫苑から外れる。
答える気もないし、義理もない。
そんな態度だった。
「あー。あと、これ。“落とし物”。
持ってきておいてあげたから」
爽真の目の前まで迫って、わざわざ目の前で紙袋を落とす。
真正面から西日を受けて反射する蜂蜜色の髪の合間から、紫苑の冷たい目が爽真を見下ろした。
逆光で陰る爽真が、上目に鋭い視線を返す。
ぶつかり合う2人の間に、ピリついた空気が走った。
「仲直りのための品のつもり?
香月さんと険悪なくせに、黙って変なもの置いていくのやめてよね」
強い口調でそれだけ言うと、紫苑が先に刺し合う視線を切る。
けれど表情は険しいまま、苛立ちをドアの開閉にぶつけて、部屋を出ていった。