台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
それは、どういう視線?
なんで私は、いま動揺しているの?
ただ、みんなの前で美玲に渡せなかっただけかもしれない。
だって、“あげない”とは言ってないみたいだし。
なのに、変な期待をしてしまう。
「照れてただけじゃないっスかぁ?」
「た、単に可愛いものが好きなだけかもしれないじゃないですかっ。
もう、陸くん。ギャップ萌えってやつですよっ」
ひよりが、なぜかチラチラとこっちの様子を伺いながら必死で陸を制している。
(私は私の道を行く。そしてその道の結末に、爽真はいない)
そう思ったばかりなのに――
こんなちっぽけな、しかも他人からの情報で、心が乱されてしまう。
(さいあく。厄介すぎる、恋……)
ほんの少し苦悶が滲んだ私に、紫苑の目が反応する。
すぐさま紙袋の取っ手を掴んで、その口を閉じてしまった。
「はいはい、ここにいない人を笑い者にしないのー。
これは俺が届けておくから。いいよね?大和」
綺麗に笑う紫苑が、真っ直ぐ大和だけを見る。
微笑んでいるのに、目だけは冷えている。
それだけは感じ取れた大和が、「うん、お願い」とぎこちなく頷いた。
――紫苑が紙袋の取っ手を握りしめて、階段を上がっていく。
一段上がるたび、綿の重さが詰まった紙袋がゆらゆらと揺れる。
その表情に王子の片鱗はなく、瞼を半分落とした不機嫌な紫苑がそこにいるだけだった。