台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

――美玲の頭がどんどん下に垂れていって、申し訳なさに押し潰されそうになっている。


“瑠奈ちゃんは爽真くんって言うのかと思ってた”

“最後はね、好きな人はちゃんとヒロインを選んでくれるの”


たまに圧を出す時はあったけど――
ずっと前から爽真を好きだったなら、納得がいく。


この子の本質は、気弱で、繊細で、悪者になりきれない。

こんなところに放り込まれてまで、必死に恋心を守っていただけの、ただの女の子だ。


「それならもっと、上手くやってほしいかな」

「え?」


美玲だけに言うのは間違ってるけど、私からは辛すぎて、爽真に発破はかけられない。

きょとんと顔を上げる美玲を見て、呆れた笑いが漏れてしまう。


純粋で、嘘も演技も下手で、放ってはおけない。
台本に縛られた舞台のくせに、この壇上には案外正直者ばっかりだ。


「……なんてね!安心して?
瑠奈がちゃんと、上手くやってあげるから」


いつの間にか水滴で机面に海を作るグラスを持ち上げて、遠慮なく麦茶を一口飲む。
グラスから落ちた水がぽたりと垂れて、短いプリーツスカートを濡らした。


カタンと、階段から誰かが降りてくる音がする。

ちゃんと場を整えておいたから、特に焦ることもなく足音が近づいてくるのを待った。


「――あれ、おはよう。
2人とも、早いね」

リビングに降り立つなり、明るい部屋を見渡して少しの引っかかりもないような顔で、その人は私たちを交互に見る。


(来たな、紫苑。私と同じ、嘘つき)

< 637 / 781 >

この作品をシェア

pagetop