台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「……」
私が落とした木の棒を拾い上げた爽真が、何も言わずに前に向き直る。
お互い握らずにいる手は、下に落ちても指が絡んでいるせいで繋がったまま。
だから爽真が歩き出すのに引っ張られて、私も同じように歩いた。
繋がってベタつく手と手にも、甘ったるいソーダの匂い。
広い夜空には、知らぬ間に満天の星が散らばっている。
(帰ったら、ちゃんとする。ちゃんとするから。
だから、もう少しだけこのまま……)
ゆらゆらと揺れる手は、離れそうで離れない。
数歩前を歩く広い背中と癖のない夜色の髪に、トクトクと胸が波紋を広げる。
ねぇ、嫉妬?
私が台本通りに恋をするのが、爽真は嫌なの?
振り向かない爽真に向かって、心の中で問いかける。
帰り道が終わるまで――
甘い恋みたいな感傷に、もうちょっとだけ浸らせてほしい。
爽真の心はわかりそうで、わからない。
聞くことも、できない。
ただ、受けてしまった熱は特別だと思うから、ずるいとは思うけど手放せない。
砂糖水のベタつきに引っかかりながら、徐々に離れそうになっていた手が、ついに離れそうになる。
そしたら不自然に爽真の手が、指同士の隙間を詰めてくる。
好き。
ずっとやまない胸の音が、まっさらな背中に告げている。
だけど、だから、言わない。
もっと大きな傷から守るためだからって、罪悪感に痛む胸に何度も何度も言い訳した。