台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

柵にかけた手に汗が滲んで、ぐっと力が籠る。

予想できないことに、今は作戦を立てられない。

けれど、やることは揺るがない。


番組を、与えられた仕事を、きちんと成功させる。
みんなの本物を守る。

爽真が傷つけられるのだけは、絶対に阻止する。


水平線を見つめるように前を向きなおす。

急に表情が引き締まったのを見て、紫苑が困ったように微笑んで、同じように前を向いた。

「そんなわけでさ。昨日の爽真との罰ゲーム。
香月さん、ボロ出してないよね?」

「……。完璧な演技だったと思うけど」


カメラの前では。


ベタベタの手も、甘い香りも、唇に触れかけた熱も。

……いろいろ頭から離れないことはあるけど。
帰り道のことまで、報告義務はないはずだ。


正面を向く紫苑の目が、ジト、と半目になる。
その目のまま睨まれた。

「何?今の間。
まさかここまでの積み上げを無にするようなこと、してないよね?」

「してないって!巻さんにも悪くないって褒められたしっ」

紫苑の疑いの目は、しばらくずっと離れない。

だからちゃんと体ごと紫苑の方を向いて、全力可愛い“瑠奈”の笑顔と態度を示す。

テラスの柵に腕を置く紫苑が、少しだけ状態を屈めて私の顔を覗き込んできた。

「俺が告白したこと、忘れてないよね?」

「っ、忘れるわけ……ッ」

思わずドキッとした勢いのまま口から言葉が飛び出す。
私の反応をじっと見つめた紫苑が、数秒してやっと私を解放した。

「まぁいいけど。香月さんは感情で番組を壊さないって、俺も信じてるしね」

「でしょでしょっ?瑠奈、ちゃんとやってるんだから♡」

追及を逃れて、ホッ。

キャピキャピはしゃぐ悪女と、ちょっと怪訝な王子の図。


とにかく今日の深夜は、フラグ探しスレッドを見てみる。

それだけ決めて、暑いテラスから退散した。
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