台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


大きな声ではない。
でも、低く通る存在感のある声。

初めて発された爽真の生声に周囲の喧騒が一瞬止んで、他のお客さんたちもキッチンに目を向けた。

「え、やば……イケメンいるんだけど」

「そうまが喋ったっ」
「やばぁ、声もかっこいいよ〜っ♡」

アオバケを知らない人も、知ってる人も、みんな爽真の虜になってる。

男性客はと言えば――
彼女が爽真に惚けて面白くなさそうにしたり、同性でもその見た目の良さに衝撃を受けていたり。

私に絡んできた男たちも、遠くのキッチンからそんな爽真にひと睨みされて敗北感に怯んでいた。

(――今のうちっ)

「ご注文決まったら、またお呼びくださぁーい♡」

さっさとそう言い残して、溜まっている注文を処理するためにキッチンに走る。

鉄板前の提供カウンターに並んだ品物を、トレイに乗せながら爽真のことを見た。


「ありがとー爽真くん。瑠奈、助かっちゃったよぉ」

ちょっと前のめりになって、こっそり伝える風なあざと仕草。
完璧な“瑠奈”でいながら、内心は少し正解に迷っている。


(このお礼は、自然な言動。人として普通……だよね?)


爽真に、だから言うんじゃない。
助けてくれた人に対して言ってるだけ。

言い聞かせながら、なぜか胸はドキドキと犯罪者のような気持ち。

誰のかはわからないけど審判を待っている私に、爽真の視線が向いた。

「……紛らわしい言動してるから、変なのに絡まれるんだよ。少しは警戒しろ」

ジュージューと熱そうな鉄板の音。
ヘラが当たる金属音。

あまりに素っ気ない一言に、爽真の隣で作業していた大和もびっくりした顔をしている。
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