台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―



開店から1時間後。
なんとなくホール担当の4人の連携が取れてきた頃に、お昼時のピークがぶつかる。

忙しいのもお構いなしに、推しを前にするお客さんたちは相変わらず遠慮なく絡んでくる。

「しおんくんっ!ファンですッ♡」

「ありがとうございます」

「あの、一緒に写真とか……」

「ごめんなさい、ダメって言われてるので」

「えと、じゃあ握手……」

「……すみません。誤解されたくないので」

ちらりと流した視線の先は、辿々しく他卓の注文をとっている美玲。
物憂げ王子の微笑に花が舞う。女の子達が一斉に赤面して、黙った。

一方こちらは――

「お待たせしました。イカ焼き、やきそば、かき氷です」

淡々と機械的に座卓に商品を並べる様を、その卓に座る女の子達が恍惚として眺めている。
汗に濡れてなんとなくしっとりした雰囲気を纏う爽真を前に、誰もが言葉を失っている。

「……失礼します」

定型台詞だけ言ってさっさと立ち上がりかけたのを、やっと我を取り戻した女の子が引き留める。

「あっあの……!いつも観てます!そうまくんのこと、大好きです……っ!」

無機質な目が、一瞬だけその子に留まる。
女の子が真っ赤になっているのとは対照的に、爽真は顔色どころか、表情ひとつ変えない。

「はぁ……どうも」


気怠げに、たった一言。
なんの余韻もなく、遠くからの“すみません”と言う呼び出しに反応してもう顔を背けて去っていく。

次の仕事を探そうと全体を見渡した時に、目の当たりにした紫苑と爽真の接客が、これ。

(2人ともあしらうの上手いな。
おかげで思ったよりスムーズにホールが回る)

でも爽真は大丈夫なの?
このバイトミッション、ファン対応でもあるのに塩すぎない?


「瑠奈、4番さんの注文とりまぁーす……」

余計なお世話だろうけどハラハラする。

「ご注文お伺いしますね♡」

着いてすぐ伝票に次々言われる注文を書き留めていると、卓を挟んで向こう側にいる美玲が困った顔をしている。


「ねぇねぇ、みれいちゃんってしおんくんとそうまくん、結局どっちが好きなの!?」


注文をとりに行った先の女子グループに絡まれている。
にやにやと仲間内で目を見合わせながら面白がっている様子が、気分悪い。

しかも嫌な質問。
本人たちがいる前で聞くなよ。

――なんて思うけど、私たちの恋は商品。
そんな常識的なマナーは適用されない。

だから美玲も対応に悩んでいるのだろう。
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