台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

「……じゃ、おやすみ」

遠慮がちに、爽真が私の頭をくしゃりと撫でる。

甘さを覚えるほど優しい手つきに、喉の奥がクンと鳴りそうになった。

――爽真が好き。
できればずっと一緒にいたい。


けどそれ以上に私は――

この恋の責任を爽真だけに負わせたくないし、
爽真が勝手な憶測に傷つけられるのを見たくない。


(悪意を笑い飛ばせなんて、ずいぶん無理難題言っちゃってたんだね)


逆の立場になって、思い知る。
そのくらい私は、仕事脳だったし、鈍すぎた。

「爽真」

手を伸ばしたのは、衝動。
ぶつかるように無防備な爽真の胸に飛び込んで、ぎゅっと抱きしめてしまう。

「……瑠、っ」

初めて知った爽真の体温と、よく知った石鹸の匂い。
爽真が驚いているのを知らんぷりして、体で記憶するように胸に頬を寄せる。

爽真の腕が、私の背中に回りかけたまま迷っている。

逃げたくなくなる前に、すっと腕を解いて体を離した。

「…………おやすみっ」

いつも通りの笑顔でお別れ。
爽真が面食らっている間に背中を向けて、女子フロアの階段を駆け上がる。

前を向いたら、身勝手に泣きたくなる自分を心の中で叱責する。


世間に受け入れられる悪女になる約束は守れないし、
“わかった”なんて、また嘘をついた。


ごめんね、爽真。
本当にごめん。

――でもいつか。許してね。
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