台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

「え……っ?あ、はい……っ!」

パタパタと転がるように階段を駆け上がる音に、ざわめきが大きくなって再開される。

「え。えっ?どゆこと?」

「瑠奈ちゃんが本当にいなくなった……?」

「いなくなったって、どこに消えたんスか!」

「みんな落ち着いて。まだそう決まったわけじゃないし……」

ひよりが駆け上がって行った階段を見ていた爽真の視線が、ソファへと移る。

そこには、紫苑が座っている。

こんなに周りが騒いでいるのに、何事もないかのように振り返りもせず朝のニュース番組を見ている。

爽真の眉がぴくりと持ち上がって、不自然に静かな紫苑の後ろ姿に迫る。
真後ろに立つと、少し荒っぽく肩を掴んだ。


「なんでそんなに普通にしてんだよ」


爽真の声に反応して、紫苑はゆっくりと振り返る。

その表情には薄い笑み。
挑発的に見えるそれには、自嘲や自責、切ない感情を押し殺しているような悲痛さがあった。


「……俺は全部、わかってるからね」


爽やか王子らしくない、低いトーンと翳る視線。
そんな紫苑を初めて目の当たりにした面々が、驚いた顔をして固まった。

爽真の舌打ちが、沈黙になった瞬間に響く。
その次の瞬間には、紫苑の胸ぐらを掴み上げる。

口元を手で覆った美玲の引っ込めきれなかった短い悲鳴が、場の空気の緊迫を煽った。

「説明しろ」
「……」

一触即発の睨み合い。
大和と陸が止めに走った時、ドタバタと転がり落ちそうな勢いで階段を降りてくる足音が響いた。
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