台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「瑠奈ちゃんの荷物ありませんっ
綺麗さっぱり無くなっていますっ」
泣きそうになりながら必死に叫ぶひよりの元に、焦った陸が方向転換して走っていく。
「どういうことですかぁ……」と、陸がたどり着くより早くひよりの涙が決壊した。
「おおおい、ひよりが泣いたっ!ちょっと紫苑さん、ちゃんと説明してください!」
狼狽する陸が雑にひよりの涙を手で拭いながら、胸ぐらを掴まれたままの紫苑に振り返る。
爽真の睨みつける視線と、みんなの動揺を孕んだ目に、紫苑が面倒くさそうに息を吐く。
それに反応して爽真の締め上げが強まったのを、大和が2人の肩を掴んで引き離した。
「まぁまぁまぁ!険悪になっちゃダメだって。
とりあえずゆっくり、落ち着いて。腰落ち着けて話そうよ。ね?」
「……」
宥めるように穏やかな笑顔を取り繕う大和をしばらく見つめて、爽真は感情を燻らせたまま雑に紫苑から手を離す。
紫苑は小さく咳き込んで、それでも飄々とした態度を崩さないとばかりに崩れたネクタイを締め直していた。