台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――数時間前、シェアハウス付近駐車場にて
シルバーのセダンタイプの車が、ガラ空きの駐車場に停まっている。
そこに足早に近づいてきた少女が、なんの許可もなしに荷台を開けて大きなキャリーケースや手提げを乱雑に入れ込む。
次いで、またしても無遠慮に後部座席のドアを開けて乗り込む。
運転席には、御手洗。
バックミラーに映る少女の暗い表情を、ほんの少し気にかけてエンジンをかけるのを躊躇った。
「――本当にいいんですか?瑠奈さん」
瑠奈がコツンと窓ガラスに頭を預ける。
目線の先には真っ白な家。
答える前に目を伏せて、それを視界から消した。
「いいも何も、もうやっちゃったし。
よかったことにするしかないでしょ」
「……そうですか」
御手洗は小さく頷くと、車のエンジンをかける。
静かな発進音が、やけに大きく瑠奈の耳に響いた。
「社長、怒ってた?」
「ええ、それはもう。カンカンです」
「だよねぇ。その分仕事、たくさんとってきてよね!」
「仕事はないですが、オーディションは山のようにありますよ。社長が怒る暇も、瑠奈さんが打ちひしがれている暇もなさそうです」
「よっしゃ、ぜーんぶ受けて立つ!」
だだっ広い駐車場を出る車が、シェアハウスに背を向けて走っていく。
――このやりとりから、約2時間後。
話は、このエピソードの冒頭に戻る。