台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「……一時、台本の破綻は香月さんの立ち回りで収まりかけた。けど、今は別の綻びでその存在が露呈して炎上しかけてる。
香月さんはその炎上を最小限に抑えるために、多分ある一手を打った。それが、今日消えた理由」
緊迫した空気のまま、全員が息を呑んで紫苑の次ぐ言葉を待つ。
腰を下ろせないまま堪えている爽真の手に、強く力が入った。
――爽真と紫苑。数秒の沈黙と、睨み合い。
すると唐突に紫苑が目を伏せて、爽真から顔を背けた。
「……この先は、言いたくない。
香月さんがなんで炎上を止めたくて、そのために何を差し出したか――
考えただけでも腹が立つし、自分で気づけよって思うから」
みんなが唖然としている間に、紫苑はあっさり立ち上がる。
ため息と一緒に前髪をくしゃりと乱して、うんざりした顔をした。
「もういい?正直俺も、親切丁寧に全部説明してあげる気分じゃないし。
……それに、たぶん今日の夜。どうせ全部わかることだしね」
紫苑を鋭く射抜いたままの爽真は、ずっと瑠奈の行動の意図を考えている。
含んだ言い方に、ひよりが焦って立ち上がった。
「ま、待ってくださいっ。今日の夜、一体何が――……」
「緊急配信。俺たちが炎上を止めるために打てる手段って、それしかないでしょ」
ピシャリと冷たく言い捨てると、紫苑はみんなに背を向けて男子フロアの階段へと向かう。
階段の入り口に差し掛かった時、最後に振り返って嘲るように挑発的に微笑んだ。
「それまでに“自分で”香月さんがどんな目的で何をしたのか、気づけるといいね?
――あぁ、それと。感情だけで突っ走るのは、香月さんの行動を無駄にする行為だからね?一応、忠告」
それだけ言うと、誰の返事も受け付けないかのように階段を上がって行ってしまう。
残された人たちは、何も言えず石のように固まってそこに座っているだけ。
――唯一爽真だけは、やるせなさに机を叩いた。