銀白虎
…それと同時に、何故かふと、満月の夜ーーーー遠くを見つめていた蓮見くんを思い出した。
学校の時のように、"完璧な王子様"を演じる蓮見くんでもなく。
白虎にいる時のような、"若"の蓮見くんでもなく。
少しでも触れたら、何処かへ消えてしまいそうな、蓮見くんを………。
「………どうでしょうか」
思わず溢れたのは、否定の言葉だった。
「わたしは……、彼の重荷にしかなってなくて………」
「そんなこと…」
「ーーでも。わたしは…ずるい人間なんです」
「……ずるい?」
けっして、こんなことが言いたかったわけじゃない。ましてや、初対面の人に対して。
だけど、止まらなかった。