まだ恋とは呼べない距離で

【番外編】延期

誠が家に帰ると、部屋では昌大が待っていた。

「なんだ、来てたのか」

「呼び出したのは誠だろ!」

「あぁ、そっか」

誠は思い出したように言って、いたずらっぽく笑う。

「おいっ! ……で、理緒ちゃんは? 今日は呼んでないの?」

「いや、友達とメシ食ってた」

「そっか……じゃあ来れないね」

「だから、一緒にメシ食ってきた」

「なんでそうなるんだよ! だから遅かったのか!」

「そういうこと」

「どういうことだよ……。じゃあ、食べてないの僕だけかよ」

「そうだな」

「……はぁ」

昌大は大げさにため息をついた。

「じゃあ、一回家帰ってメシ食べてくるわ」

「今日はナシでいいや」

「え?」

「戻って来なくていいぞ」

「僕、お前のこと一時間以上待ってたんだぞ?」

「悪い悪い」

誠の態度は全く悪そうではない。

昌大は玄関で靴を履きながら、ふと振り返った。

「……誠、お前さ」

「ん?」

「それ、もう結構好きだと思うよ」

「は?」

誠は眉を寄せる。

昌大は、にやっと笑った。

「いや、いいや」

そう言って、そのまま部屋を出ていく。

玄関の扉が閉まり、部屋が静かになった。
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