一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「馬鹿言わないでよ」

担当者は吐き捨てるように言い、私が差し出した渾身のプレゼン資料を、テーブルの上にバンと投げ捨てた。

紙が宙を舞い、床に滑り落ちる。

「コストを安くしますなんて耳障りのいい言葉でアポを取っておいて、結局『それはできません』と翻して追加オプションを要求する。高い契約料をふんだくる常套手段だろう? そんな営業、もううんざりなんだよ」

私は凍りついた。

隣の黒瀬社長さえも、少しだけ目を見開いて硬直している。

「……本当なのか?」

黒瀬社長が低く、重い声で私に問うた。

私への疑念ではない。

会社の現状を、私を通じて確認しようとしている声だ。

私は喉の奥で詰まるような苦しさを感じながら、正直に答えるしかなかった。

「……正直に申し上げますと、弊社の営業の中には、そのような手法をとる者も存在します。ただ……」
< 20 / 92 >

この作品をシェア

pagetop