一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
この車は今、私の未来を乗せて走っている。

そんな確信に近い思いを抱きながら、私は前を見据えた。

その日の最後のアポイントメントだった。

西日に照らされたオフィスビルの重厚なドアをくぐり、私は深呼吸をした。

隣には、静かな威圧感を放つ黒瀬社長。

この人が同行しているというだけで、私の心拍数は限界まで跳ね上がっている。

「ああ、黒瀬さんのとこでしょ? うちは間に合ってるよ」

通された応接室で、担当者の初老の男性は、私の顔を見るなり鼻で笑った。

まるで黒瀬という名前が、営業の押し売り代名詞か何かのように。

だが、彼は知らないのだ。

その「黒瀬」本人が、今まさに隣で静かに微笑んでいることに。

黒瀬社長は動じることなく、優雅に一礼した。

「私共の名を知っていらっしゃるとは、さすがですね。お目が高い」
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