一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
しかし、その時だった。

カチャリ、と軽やかな音を立てて社長室のドアが開いた。

中から出てきたのは、目を疑うほどに美しい女性だった。

整えられた髪、完璧な所作。

すべてが洗練された彼女は、私と目が合うと、余裕のある微笑みを浮かべた。

「何か、御用でしょうか?」

声さえも鈴を転がすように美しい。

私はたじろぎ、反射的に首を振った。

「あ、いいえ……失礼しました」

私が立ち去ろうとしたその時、部屋の中から聞き慣れた、低く響く声が聞こえてきた。

「美鈴、どうした?」

美鈴。

その名前を、社長が呼び捨てにした。

私の胸の奥に、冷たい楔が打ち込まれたような痛みが走る。

特別な関係なのか。

そう思わざるを得ない親密な響きだった。

「社長、この方が……」

美鈴と呼ばれた女性が振り返ると、開かれた扉の向こうに、デスクに座る黒瀬社長の姿があった。
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