一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
「……何でも、ありません」

「ああ、営業成績のことか」

社長は私の背後の掲示板に目をやり、一瞬で状況を理解したようだ。

彼は成績表を見つめ、何かに気づいたように小さく頷いた。

「高梨、気にするな」

その言葉は、オフィス中に響き渡った。

静まり返る営業部。

誰もが息を呑んで私たちを見守っている。

「俺の指示だ。君の評価が下がることはない」

その言葉が持つ意味を、周囲が理解するまで数秒かかった。

社長が公衆の面前で、私の評価を保証したのだ。

それは私にとって救いであり、同時に、同僚たちにとっては「贔屓」という名の毒にもなりかねない。

これ以上ここにいられない。

私はたまりかねて、資料を掴んでオフィスを飛び出した。

エレベーターで屋上階の非常階段へ逃げ込む。

冷たい風が顔に当たる。
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