一途な社長に溺愛を教え込まれた夜
(社長……黒瀬社長……)

心の中でその名前を呼ぶだけで、胸が締め付けられる。

あの冷徹で、誰よりも優秀な社長。

私の憧れであり、目標であるあの人が、こんな無能な私を見たら、なんて言うだろう。

「失望、される……」

床にへたり込みそうになる足に力を入れ、私はぼろぼろになった企画書を抱きしめた。

謝罪の言葉を何度反芻しても、胸の痛みは消えない。

私はただ、自分の無能さを噛みしめながら、冷たい会議室の椅子に深く沈み込んでいた。

もう、戻れない。私の営業人生は、ここで終わったのだ。

そう確信したとき、スマホが震えた。

表示されたのは『社長』の二文字。

「……ッ」

画面を見つめたまま、私は呼吸を止めた。

取らなければいけない。でも、出るのが怖い。

今の私は、あまりにも惨めで、あまりにも弱い。

電話に出た瞬間、社長の冷たい声が聞こえるのではないか。
< 6 / 92 >

この作品をシェア

pagetop