捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~
37.断罪
「あ……? お前の持っているものは……?」
ディルダが私の持っている鈴に気が付いた。
私は右手をかすかに上下させ、鈴を揺らす。
ゆったりと……私の持つ鈴が柔らかく、清らかな音を醸し出す。
ディルダの持つ鈴の音と私の持つ鈴の音が共鳴して、大気に反射する。
同時に、大地の鳴動は急速に萎んで消えていった。
「なっ!? ど、どうして……っ」
「陛下の鈴の音が魔獣を呼び覚ます、そうですよね」
私の指摘に周囲がどよめく。
それは神話や伝説の中の話であり、この世界ではあり得ない力だ。
「どうやって陛下と兵が魔獣を都合良く動かしていたのか、最近ずっと気になっていました」
条件を並べれば、簡単だけど仮説は立てられる。
王都には反ディルダ派の官僚や貴族も多い。
まぁ、私もそうだけど。これらの人たちの目をかいくぐるのは、簡単ではない。だから大きくて目立つものではないだろうと思っていた。
「かなり小さいものだろうとは思っていました。でも……この現物を目にするまで信じられませんでした。まさか、こんなお手製の鈴だなんて」
「そ、その鈴は……」
「メルダ嬢に渡したでしょう」
ディルダがメルダを怒鳴りつける。
「この役立たずが! この鈴は敵に渡らないよう必ず壊せと命じただろう!」
「だ、だって……っ!」
捕らわれたメルダが震えながら抗議する。
「彼女が命令を無視したおかげで鈴は残されて――少し前にレオール様が奪取いたしました。確かに使用直後に壊されたら、打つ手はなかったでしょうね」
しかしそうはならなかった。
その為に私はメルダと会ったあの時に疑心を打ち込んでいたのだ。
もしメルダがディルダにあくまでも忠実なら、私の言葉も無視しただろう。そうして鈴を壊す命令も実行したはずだ。
でも私の言葉で揺れたメルダはディルダの切り札を手元に残そうと思ってしまった。
レオールから踏み込まれた、あの瞬間まで。
それが安全に繋がると信じて。結果は私たちに利するだけだったのに。
ディルダが必死に鈴を揺らす。
「だが鈴を手に入れても、そう簡単に解析なんてできないはずだ……!」
「そうですか? これは公国の国宝のひとつ、初代国王の鈴に似ておりますよね。あの当時の副葬品としても鈴は非常によく出土します」
「――っ!」
ディルダの手が止まり、顔が青くなる。そう、この鈴には原型があった。
そもそもラッセリアの初代国王は音楽を愛する冒険者で音に関連した人間だ。
それにディルダの音楽好きは誰でも知っていた。
「素材はありふれた木製。私なら見れば構造は把握できます」
「そんな……」
ディルダはそこで絶句する。やっと彼も私の能力を思い出したようだ。
私は見たままを記憶でき、些細な違いも認識できる。
手元に現物があれば、改造することも可能だ。
でもかなりギリギリではあったが。
メルダの持っていた鈴を分解して、打ち消すような音を出す鈴に改造するのは神経が疲れた。
ここでも私がこれまでに読んだ音楽や物理関連の本が役に立ってくれた。
「事前にテストするのには限界がありましたが、完璧に動作してくれて良かったです」
「うっ、ううっ!」
切り札が不発に終わったディルダが後ずさる。
もう自分には何もないことがようやく理解できたのだ。
「寄るな……っ!」
「ディルダ、終わりだ」
レオールがディルダに迫る。正義の怒りをみなぎらせて。
ディルダが周囲を見渡しても、もはや誰も助けてはくれない。
「待て! わ、わかった……」
地面に情けなくへたり込んだディルダがレオールに両腕を振る。
子どものようにやめてくれとディルダはわめいていた。
「いくら欲しいんだ!? 命を助けてくれるなら、何だって支払う!」
「……つくづく愚かだな」
レオールが吐き捨てて、剣を振りかぶる。ディルダがより一層腕を振った。
私はレオールがやろうとしていることを察したが、黙っていた。
「やめろ! やめろぉぉっ!」
「命までは奪わん。だが、その両腕は――魔獣を呼ぶ許されざる罪を犯した」
剣が振り下ろされ、ディルダの両腕が宙を舞う。
こうしてラッセリア公国を巡る一連の事件は幕を閉じたのだった。
ディルダが私の持っている鈴に気が付いた。
私は右手をかすかに上下させ、鈴を揺らす。
ゆったりと……私の持つ鈴が柔らかく、清らかな音を醸し出す。
ディルダの持つ鈴の音と私の持つ鈴の音が共鳴して、大気に反射する。
同時に、大地の鳴動は急速に萎んで消えていった。
「なっ!? ど、どうして……っ」
「陛下の鈴の音が魔獣を呼び覚ます、そうですよね」
私の指摘に周囲がどよめく。
それは神話や伝説の中の話であり、この世界ではあり得ない力だ。
「どうやって陛下と兵が魔獣を都合良く動かしていたのか、最近ずっと気になっていました」
条件を並べれば、簡単だけど仮説は立てられる。
王都には反ディルダ派の官僚や貴族も多い。
まぁ、私もそうだけど。これらの人たちの目をかいくぐるのは、簡単ではない。だから大きくて目立つものではないだろうと思っていた。
「かなり小さいものだろうとは思っていました。でも……この現物を目にするまで信じられませんでした。まさか、こんなお手製の鈴だなんて」
「そ、その鈴は……」
「メルダ嬢に渡したでしょう」
ディルダがメルダを怒鳴りつける。
「この役立たずが! この鈴は敵に渡らないよう必ず壊せと命じただろう!」
「だ、だって……っ!」
捕らわれたメルダが震えながら抗議する。
「彼女が命令を無視したおかげで鈴は残されて――少し前にレオール様が奪取いたしました。確かに使用直後に壊されたら、打つ手はなかったでしょうね」
しかしそうはならなかった。
その為に私はメルダと会ったあの時に疑心を打ち込んでいたのだ。
もしメルダがディルダにあくまでも忠実なら、私の言葉も無視しただろう。そうして鈴を壊す命令も実行したはずだ。
でも私の言葉で揺れたメルダはディルダの切り札を手元に残そうと思ってしまった。
レオールから踏み込まれた、あの瞬間まで。
それが安全に繋がると信じて。結果は私たちに利するだけだったのに。
ディルダが必死に鈴を揺らす。
「だが鈴を手に入れても、そう簡単に解析なんてできないはずだ……!」
「そうですか? これは公国の国宝のひとつ、初代国王の鈴に似ておりますよね。あの当時の副葬品としても鈴は非常によく出土します」
「――っ!」
ディルダの手が止まり、顔が青くなる。そう、この鈴には原型があった。
そもそもラッセリアの初代国王は音楽を愛する冒険者で音に関連した人間だ。
それにディルダの音楽好きは誰でも知っていた。
「素材はありふれた木製。私なら見れば構造は把握できます」
「そんな……」
ディルダはそこで絶句する。やっと彼も私の能力を思い出したようだ。
私は見たままを記憶でき、些細な違いも認識できる。
手元に現物があれば、改造することも可能だ。
でもかなりギリギリではあったが。
メルダの持っていた鈴を分解して、打ち消すような音を出す鈴に改造するのは神経が疲れた。
ここでも私がこれまでに読んだ音楽や物理関連の本が役に立ってくれた。
「事前にテストするのには限界がありましたが、完璧に動作してくれて良かったです」
「うっ、ううっ!」
切り札が不発に終わったディルダが後ずさる。
もう自分には何もないことがようやく理解できたのだ。
「寄るな……っ!」
「ディルダ、終わりだ」
レオールがディルダに迫る。正義の怒りをみなぎらせて。
ディルダが周囲を見渡しても、もはや誰も助けてはくれない。
「待て! わ、わかった……」
地面に情けなくへたり込んだディルダがレオールに両腕を振る。
子どものようにやめてくれとディルダはわめいていた。
「いくら欲しいんだ!? 命を助けてくれるなら、何だって支払う!」
「……つくづく愚かだな」
レオールが吐き捨てて、剣を振りかぶる。ディルダがより一層腕を振った。
私はレオールがやろうとしていることを察したが、黙っていた。
「やめろ! やめろぉぉっ!」
「命までは奪わん。だが、その両腕は――魔獣を呼ぶ許されざる罪を犯した」
剣が振り下ろされ、ディルダの両腕が宙を舞う。
こうしてラッセリア公国を巡る一連の事件は幕を閉じたのだった。